Webでの仕事を求めて
随分寝た。
心なしか、頭が重い気がする。今日は曇天に違いない。カーテンを開けると思った通り空一面がグレーだった。遅めの朝食を取り、日課となっているストレッチをして、頭の中のもやが晴れてくると、思考も回転し始める。さて、今日はどうしようか、考えていると、一つの考えが閃いた。
「インターネットで在宅でも出来る仕事を探そう」
ぼくのパニック障害は、発症当時に比べると随分良くなってきた。しかし、だからといってすぐに仕事が出来るかと言えばそれは疑問だ。
しかもこの病気の厄介なところは再発の可能性がつきまとうということ。この先仮に病気が寛解したとして、また何年後かには再発する危険性を考慮に入れて仕事をしなければならない。言うなれば、散々仲良くしていてある日突然姿を消した友人がいきなり訪ねてくるみたいなものだ。
幸いなことに、今は経済的にも何とかやっていけてる状況だ。ブログを趣味として始め、更にツイッターも開設して、パソコンに向き合いっぱなしの毎日。パソコンの中身は色んな情報で溢れている。何事にも言えることだが、どんな情報があったとしても、そこから何かしら学ぶべきものがあるはずだ。
インターネットで仕事をしている人ってどんな仕事をしているんだろう・・・?そう思いながら検索すると、色んな情報が入ってくる。
エンジニア、webライター、webコンサルタント、webマーケター、データサイエンティスト・・・etc
色んな仕事があるものだ。いやぁ、どれも僕には難しそうだな・・・。でもブログも書いているし、ライターなら何とかいけるんじゃないのか・・・?
なんて考えながら検索を続けていると、一際まばゆい光を放っている求人が。
「web占い師募集!未経験、初心者歓迎!占って稼げちゃう」
なんだこれ。
突っ込みたいところは多々あるが、「占って稼げちゃう」なんて「楽しく稼げちゃう」みたいな感じがして、カジュアルそうでカジュアルでない。
占いか。。
考えてみると占いの効果は意外と大きいかもしれない。僕は今でこそ全くテレビを見なくなったが、昔実家に住んで学校に通っていた時、朝のめざまし占いを毎日見ていた。僕は双子座。何にもない日は、「双子座6位かー」なんて思っていたが、席替えの日には話は別だ。
席替え、それは退屈な学生生活の中で一大イベントだ。
あいつの隣にはなりたくない。片想いをしているあの子の隣に座りたい。様々な欲望が入り乱れる。そしてその席はしばらくの間固定される。嫌な人の隣に席がなろうもんなら、毎日がブルーになる。
しかも、そこでクラス内での自分の評価も分かってしまうのだから恐ろしい。子供は残酷だ。基本的に太っているだけでもうアウトだ。かくいう僕も、昔は相当なデブだった。女子の間で交わされているであろう話がとても気になっていた。臭いとか絶対に言われていたに違いない。
僕たちの運命を握っていたのはクラスの学級委員長。彼の手にぼくたち一人一人の運命はゆだねられていた。裏取引までする奴も出てきたほどの席替え。その取引がばれたもんなら村八分だ。
そんな重大な日、占いをチェックすることは当然の流れだ。
双子座が1位なら、堂々とそのまま学校へ行き、12位なら、なるべく席替えの時までに徳を積もうといいことばかりする。必要以上に電車内で席を譲ったり、重たくないような荷物を、さも重たいかのように持ってあげたりする。
考えれば悲しいことだが、僕たち人間は何かにすがっていたい生き物だ。
そんな重大な占いを扱う人が未経験でいいのだろうか?
占いの結果を見てプロポーズする人もいるはずだ。それで振られたら、その占った人を逆恨みするかもしれない。そして、「俺は神なんか占いなんか信じねぇ!信じられるのは己の拳のみよ!!」なんて言いながら、アメリカとかに武者修行に行っちゃうかもしれない。
占い。そう考えると、やはり考えさせられるものもある。
僕たちは、どうしても未来のことを知りたくなり。このまま自分はどうなってしまうのか?将来の自分はなにやってるのか?もっと近視眼的に言えば、今日を無事に乗り切れるのだろうか?そんな心配で満ち溢れている。
占いの起源は遥か昔、まだ文明が誕生していない時代からあったそうだから、人類がいかに未来について思いを馳せているかがわかる。
そんな中での「占い師!未経験、初心者歓迎!」の求人。この求人を出した人に思いを馳せてみた。
「占いなんて、そんなもんだ。この先に待っているものをどう捉えるかは、それはお前たち次第なのさ」
という教えが隠れているに違いない。
やはり、何事にも学ぶべきものはある。
まぁ僕は絶対にやらんけど、この仕事。
そんなことを思い耽りながら、少々疲れたので休憩も兼ねて自分の運勢をヤフーの占いで見た。
「双子座5位
大切なことを教えてもらえる機会があります。謙虚に学ぶ姿勢を忘れずにいてください。」
なるほど占いって、当たるんだな。